2019.12.03

あなたと夜(恐怖)と音楽と 第3話 ボディー&ソウル(ジョニー・グリーン)

仏教・お位牌とはまったく関係ありませんが小県ろぐ(ちいさがた・ろぐ)氏の「恐怖」を題材としたショートショートを連載することになりました。お楽しみください。

 吉村幸介の妻が新興宗教に染まり始めたのは、つまらぬ口げんかが元で吉村が初めて妻をしたたかに叩いて程なくのことだった。
 どんな教義の宗教か吉村は詳らかには知らなかったが、ただ、極端に物を大事にする教えだということだけは知っていた。妻は入信後ありとあらゆる不要になった物、卵や豆腐のパック、ぼろ切れ、空き缶などかつて吉村が書斎と称していた玄関脇の狭い板の間に押し込んだ。吉村は最初抗議の口を開いたが、妻はもともと細い目をますます細めて無言で睨むだけなので、いつの間にか諦めた。そのうちどこからともなく大量の、ある意味ゴミとも言える不要品を妻は集めて来出し、そうした不要物は2ヶ月に一度偶数月に信者とおぼしき若いものが軽トラで回収していった。
 そんな生活が一年ほど続いたなぜか奇数月、身なりのよい中年の男と若い信者数人が吉村宅を訪れた。中年男は懐から名刺を吉村に渡し、値踏みするように吉村を見詰めた。名刺には男の名と、当然ながら宗教法人の名と、男の所属が書き添えてあった。廃物顕彰事務局長とあった。
「奥様には大変お世話になっております」
男は頭を下げた。吉村も仕方なく口の中でもぞもぞと言い、会釈した。
「奥様の御提供される物たちは大変程度がよく、利用させていただいております。本当に感謝しております。また本日は実に素晴らしい物を御提供いただけるということで、勇んで参りました」
そう言って、若い屈強な信者達を振り返った。若者たちも吉村に一斉に会釈した。
「しかしつい先月皆さんがその、何というか、不要品をお持ちになったのでそんなに数はないと思いますが」
吉村はかつての書斎をのぞき込んだ。中年男はにこやかに笑い、
「いやいや御冗談を」
と言って若者たちを振り返った。と間を開かず彼らは吉村を押さえ込むと大きな袋を被せ、紐で縛り始めた。余りの突然のことで暗闇で身をくねらせるばかりの吉村に、中年男は静かに言った。「吉村幸介さん。あなたにもやっと人のお役に立てることが出来るんです。喜びましょう。あなたのその体の中の物たちは、困っている人たちのお役に立てるのです。あなたの魂はそれで大いなる世界に羽ばたけるのです。あなたは既に奥様の廃物なのですが、私ども顕彰事務局がその廃物を甦らせるのです。どうです、素晴らしいことだと思いませんか」
中年男は言葉を切って、やや考えてから付け足した。
「麻酔は内蔵によい影響を与えないとのことですので、 切り出しには多少苦痛があるかとは思いますが」
吉村は気を失った。

●表題の楽曲名とお話の内容は一切関係ありません

あなたと夜(恐怖)と音楽と 第1話 アンダンテ・マ・モデラート(ブラームス)
あなたと夜(恐怖)と音楽と 第2話 柳よ泣いておくれ(アン・ロネル)
2019.10.08

あなたと夜(恐怖)と音楽と 第2話 柳よ泣いておくれ(アン・ロネル)

仏教・お位牌とはまったく関係ありませんが小県ろぐ(ちいさがた・ろぐ)氏の「恐怖」を題材としたショートショートを連載することになりました。お楽しみください。

あなたと夜と音楽と 第2話 柳よ泣いておくれ(アン・ロネル)

「ほほお、我が営業部成績最下位の木村君は、営業本来の外回りもせずにお手製の弁当を机で食べるってか?大した度胸じゃないの!」
山岡部長の声が、閑散とした営業部の部屋に響き渡った。木村洋二は思わず持ちかけた箸を置いた。目の前には母親から高校生の時にもらったバンダナの上に、花畑のような弁当が乗っていた。昨晩の夕食の残りの野菜炒めとコロッケ、今朝あつらえたウインナーソーセージの炒め、堅焼きの目玉焼きが納まっていた。他者から見れば大した弁当ではないが、木村洋二にとっては、まさに昼の「御花畑」だった。その花畑を前に、木村は身を固くしてうなだれた。
 「なあ木村君。壁の成績グラフ毎日見てるよなあ。自分がどのくらいの成績か解ってるよなあ」部長は木村の耳元に身を寄せて囁いた。はい。木村は口の中で呟いた。
「それがだ、他の連中は成績あげようと昼飯も喰わんで必死で外回りしとるんよ」
部長は咳払いをひとつした。
「木村君はどんな御身分か知らないが、ゆうゆうと快適な部屋でお昼ご飯を食べてらっしゃる。これはなかなか出来ることじゃないよ。そろそろ辞表でも用意しておいたほうが良いかも知れんなあ」
部長は勢いよく手を振った。その手がバンダナに引っ掛かり、花畑が宙に舞い、情けない音を立てて床に落ちた。部長はスマンとかなんとか口の中でもごもご言いながら立ち去った。遠くの女子社員達が立ち上がって顔を見合わせ、肩をすくめ、何事もなかったように座り昼飯の続きを食べ始めた。
 木村洋二のアパートは郊外の私鉄駅から歩いて十五分ばかりの古い木造二階建てで、上下併せて十二部屋あり、洋二の部屋は鉄の外階段を上がったすぐの場所で、木製のドアに名刺から切り取った「木村洋二」のネームが貼ってある。右隣は仲の良い老人夫妻で、近くの銭湯までもたれ合うように歩く姿を時折見かけた。左隣は木村より大分年上のくたびれたサラリーマンで、派手目だが不潔な感じの女を取っ換え引っ換え連れ込んでいた。
 結局昼飯抜きになった洋二は、いつものように午後から何の営業成果も得られず、暗い道をアパートに向かって肩を落として歩いた。小さな住宅が建ち並ぶ一角に、ぼんやりと明かりのついた店があった。布団屋だった。店といっても間口二間、奥行き半間ほどで、やたら横に長く奥に狭いおかしな作りの店だった。顔色の悪い痩せた夫婦が上の布団を下に、下のものを上にやっているのを時々見かけるだけで、とても商売繁盛とは思えない。ただ洋二の目を引いたのは店の前の三和土にあるふたつの小さな鉢で、見たこともない木が植わっており、土がいつもからからに乾いているのに不思議と枯れないことが気になった。
 体を引きずるように鉄の階段を上り、きしむドアをあけ、小さなキッチンを抜け、万年床に倒れ込んだ。
 そのまま眠り込んだらしい。小さなノックの音で目が覚めた。年期の入ったドアを開けると、若い、しかし美人とは言い難い女が立っていた。
「夜分、お疲れのところ申し訳ございません。木村様、木村洋二様でよろしいですよね。時々駅前のスーパーでお見かけしているんです」
洋二は、はあ、とくらいにしか返す言葉がなかった。女は続けた。
「実は駅前のスーパーで抽選がありまして、木村様が当選されたのでその御報告に参りました」
そう言えばスーパーで買い物をしたときに何か書いて応募箱に放り込んだ覚えがある。
「当選された方のお名前をスーパーで張り出しておいたのですがおいでにならなくて、本日が商品引換の期日だったものですから」
そう言って女が振り返ると、それを待っていたように暗闇から痩せた女が大きな包みを抱えて現れた。あの布団屋だった。
「おめでとうございます」
それだけ言って、女は一礼して布団屋と一緒に階段を下りていった。洋二はしばしぼう然としていたが、包みを部屋に引きずり込みばりばりと包装紙を破いた。柔らかな掛け布団が出てきた。俺もつきが回ってきたかな、洋二は小さく微笑んだ。それまでの重い掛け布団を部屋の隅に蹴飛ばし、新しい布団を引っ被った。布団は軽く暖かく、これまで味わったことのない幸福感に包まれた。このままずっと布団にくるまっていられたら、どんなに幸せだろう。洋二は深い眠りに落ちていった。
 次の日から木村洋二は無断欠勤を重ねた。電話にも出ない。山岡部長は若い部下を伴って木村のアパートを訪ねた。返事がないので大家を呼び、鍵を開けさせた。布団が真新しいこと以外は特に変わったことはなかったが、当然木村の姿はなかった。
 山岡部長は当惑気味に帰路についた。布団屋の前を通りかかったときに、見たこともない木が小さな鉢に植わっているのを見かけた。若い、しかし美人とは言えない女がひとつの鉢にたっぷりと水やりをしていた。鉢は合計三つあった。あとのふたつの鉢の土はからからに乾いていた。

●表題の楽曲名とお話の内容は一切関係ありません



あなたと夜(恐怖)と音楽と 第1話  アンダンテ・マ・モデラート(ブラームス)
2018.12.27

仏教の宗派について 2

●真言宗
おなじみ弘法大師空海が開いた宗派です。密教の優位性を説く教義が特長で、天台宗の「台密」に対して「東密」(教王護国寺=東寺)と称されます。
師資相承を旨とするため、分派が大変に多い事でも知られます。代表的な宗派は16あり、その対本山が18あるため真言宗十八本山と呼ばれています。その中で大きく分けて古義真言宗(高野山真言宗が代表格)・新義真言宗(豊山派・智山派)・真言律宗の三つに分類されます。

修行により大日如来と一体となり即身成仏になりえるとの弘法大師の教えが根本で、その修行は印を結ぶ(身密)、真言を唱える(口密)、瞑想する(意密)の三密のほか、森羅万象は地水火風空識の六つからなるという六大、この六大をとらえる事が出来る四つの曼荼羅が四曼で、これら六大・四曼・三密が真言宗の教義の根本というわけです。
ただこうした教義のお話ではなく、真言宗とは切り離されたところで「お大師様」による逸話が巷では広く話されている事は御存知の通りです。お大師様は日本全国のあらゆるところに顔を出し、その行いが多く伝説となって残っていることから、逆にお大師様の偉大さが解ろうというものですね。
2018.12.27

仏教の宗派について 1

●天台宗
伝教大師最澄(767〜822)が唐に留学後帰国して開いた宗派です。開宗は西暦でいうと806年で、平安時代の始め頃になります。法華経を中心に据えた教学が特長で、法華円教、戒、禅、密教という四宗を兼ね備えたいわば綜合仏教で、鎌倉時代の新しい宗派(法然・親鸞・栄西・日蓮・道元)の母体ともなり「日本仏教の母山」と称されます。
不幸な事に10世紀の終わり頃天台密教(台密といいます)の解釈を巡り円仁・円珍が解釈をめぐり対立し、円珍は弟子を引き連れて延暦寺を去り、園城寺を拠点としました。これが「寺門派」で、延暦寺に残った円仁の派は「山門派」と呼ばれるようになります。
時代は下って戦国時代末期、織田信長による焼き打ちに遭い、大打撃を受けましたが江戸時代に徳川家康の懐刀として有名な天海が宗門を立て直しその勢力を盛り返す事になります。後に徳川家光によって上野に東叡山寛永寺が造られ、西の比叡山延暦寺に対して東の総本山として栄えました。
現在寺門派、山門派のほかに天台宗系といわれる宗派は20派ほどありますが、その中で一番おなじみなのが浅草寺で、1950年に「聖観音宗」として天台宗から分かれました。
2018.10.19

お位牌の梵字(種子 しゅじ)について

お戒名の上にしばしば「梵字」が書かれていることがあります。これを種子(しゅじ)といいます。これは仏様を一字で表わしたもので、真言種子とも呼ばれます。たくさんの仏様に梵字の種子が当てられていますが、お位牌に書かれるのはその中のわずかです。以下例を挙げていきます。
真言宗
「ア」です。大日如来を表わします。因に「ア」は例のこま犬の「ア・ウン」で知られています。梵字の字母は「ア」で始まり「ウン」で終わります。密教ではこの二文字を万物の初めと終わりを象徴するものと考えています。
浄土宗
「キリク」です。これは阿弥陀如来を表わしたものです。昔のお墓などにもよくこの「キリク」は彫られていますので、御記憶の方も大勢いらっしゃるでしょう。
曹洞宗
「バク」です。釈迦如来(お釈迦様)を表わします。御存知のとおり仏教を創設しあまねく世に広めました。
子供
「カ」です。地蔵菩薩を表わします。お地蔵様は幼くして亡くなった子供たちを守ってくれるとされています。


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2018.10.17

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